以前150円で買ったダイソーのLED電球(昼白色)はチラツキがあるので使っていませんでした。
使わないので分解しました。
※ここで言うチラツキとはAC電源の周波数に関連する100Hzまたは120Hzの明滅の事ではありません。
もっと低周波でランダムな明滅の事です。
■150円電球
(1)分解した
1.ACをブリッジで整流
2.平滑コンデンサは33uF 200Vの電解コンデンサ
3.11個のLEDチップを直列接続(1チップに3LED素子と思われる)
4.定電流IC 9003A H8080 電流検出抵抗 5Ω二個パラ
(2)平滑コンデンサに47uFや120uFを並列に追加
1.いずれもチラツキは無くならない
(3)電流検出抵抗値の変更
1.5Ωを10Ωに変更
2.チラツキは無くならない
(4)定電流ICを400Ω抵抗に置き換える
1.ICを取り外し、400Ωに置き換える
2.チラツキは無くならない
(5)定電流ICを150Ω抵抗に置き換える
1.150Ωに変更
2.チラツキは無くならない
基板のランドが半田作業に耐えられなくて剥げ、これ以上のテスト不可となる。
基板は放熱対策と思われるアルミ基板であった。
ダイソーの150円電球にしては、作りは立派であった。
■200円電球
以前150円で買ったLED電球と同じものと思われる。
こちらもチラツキがある。
分解せずに発光状態を調べてみた。
テスト期間中に現れ、波形が取れたのは一度のみのレアーなケースから先に記述します。
(1)発光状態
1.以下 Si PINフォトダイオード(遮断周波数25MHz) S2506-02 4.5V電源 負荷1KΩ(または10KΩ)の両端の電圧波形にて
2.平滑コンデンサの容量不足によりAC120Hzのリップルが大きい
3.光量低下中に異常発光
4.高周波発光(発振)
5.発光安定期の高周波発光
■未確認の事項(チラツキの原因)
各LED素子の過渡期の電流電圧特性は
抵抗器のように安定したものではなく、不安定なものなのではないか?
しかし、発光安定期でも高周波発光が起こっている事から、
たとえ直流点灯したとしてもLEDの直列接続そのものに、高周波発光する要因があるのかもしれない。
そして、直列接続が可能な個数に限界があるかも知れない。
ネットで見かけた記事には東芝のLED電球は並列接続であったと記載があったが、
VFのバラツキ対策がしてあって「さすが東芝」だったのだろうか。
並列だったら、劣化した時に急に切れないで徐々に暗くなるので望ましいという事も。
前出の異常発光はテスト期間中一度確認できただけで、通常はこちらの状態です。
結論を先に言うと、チラツキが発生するのは、AC電圧が低く かつ 電圧の変動が比較的早い周期である時 に起こっていました。
生活時間帯で言うと、夕方から深夜前など人々が家庭で電気器具をランダムに使っているときにチラツキが大きく、深夜になるとチラツキは小さくなりました。
このLED電球でチラツク原因は、定格電圧のAC100V時でも定電流ICが働き出す電圧に達しない為だと思われます。
例えば103Vや105V程度になると、電源電圧である脈流のピークがLED11チップ(33LED素子)の電圧降下分より大きくなり、超過した部分で定電流動作をする為、一定光量の部分の比率が大きくなりチラツキが感じにくなってきます。
(1)チラツイている時の発光状態
1.100msから1s程度の大きな揺らぎがある
2.チラツキが少ない時(時間軸を変えています)
(2)AC電圧が105Vでチラツイていない時の発光状態(基板付近温度73℃)
※正確にはチラツキが少なく感じにくい時
1.上部がフラットでチラツキなし
2.拡大すると波形の上部では定電流回路が働き一定の発光量となっている
(3)AC電圧が100V(定格電圧)でチラツイている時の発光状態(基板付近温度60℃)
1.波打っている
2.拡大すると上部に平坦な部分(定電流駆動部分)がない
異常発光については再現できなかったので、検討の対象外とする。
状況から定電流ICが機能する状況にもっていく事が対策となると判断しステップを踏んで確認する事にしました。
(1)平滑コンデンサーを取り外す
口金の中心電極から基板内にACを取り込むルートに4.7Ωの抵抗が入っている。
この為、平滑コンデンサーの充電期にドロップが起こり、コンデンサーの最大電圧が低くなっている可能性を確認する為に、平滑コンデンサーを無効にし、発光ピーク部分に平坦が現れる、すなわち定電流ICが機能するか確認してみました。
1.コンデンサーとソケットの間に絶縁チューブを挟み無効化する
2.100V時の発光状態
平坦な部分はない。平滑コンデンサーが無効となっている為、緩やかな下降ではなく短時間で発光が終っている。
下部は完全に滅灯している。

揺らぎがある

3.105V時の発光状態
上部に平坦な部分が現れ、定電流部が動作している事がわかる

上部は平坦になる。

4.結論
平滑コンデンサーがなくなると、AC正弦波の位相上で電圧が低くなる部分ではLEDが発光しない為、発光している時間の割合が減り暗くなる欠点がある。
さらに、完全な滅灯状態(発光の欠落)にまでなる為、電気用品安全法(PSE)に引っかかる。
(2)LEDチップの数を減らし定電流ICが動作できる電圧を確保する
各LEDチップは動作時、11~12V程度の電圧を消費し、11個あると121~131Vの電圧降下が発生する。
一方、平滑コンデンサーの電圧は130V付近であるため、定電流用のICが動作する電圧を確保する状態にはない。
これを解消する為、LEDチップの直列数を11個から10個に減らしてみる。
平滑コンデンサーは元の状態に戻してある。
1.一つのLEDをジャンパー線でパスし、合計10LEDチップとする
2.100V時の発光状態
上部は平坦になる
3.95V時の発光状態
上部の平坦な部分(定電流駆動部分)がまだ残っている
上部はまだ平坦な状態にある
僅かに残るチラツキの原因
定電流ICが機能し上部に平坦な部分が現れても、僅かにチラツキは残ります。
その原因はAC電圧の短時間変動により、平滑コンデンサーに蓄積されるエネルギーが異なり、平坦部分とスロープ部分の比率が異なってくる為です。
下図は、多数の波形を重畳しスロープ部分が前後に変動している所を示しています。
(3)平滑コンデンサーに120uF追加
平滑コンデンサーの容量を大きくし、蓄積エネルギーを増し、LEDの供給電圧を一定以上に保つ事により、スロープ部分を縮小またはなくなる事を確認する。
1.既存の平滑コンデンサーの取り付け端子にパラに接続します。
ただし、テスト途中でこの直付けから、リード線で外部へ引き出す方式に変更しました。
理由は、コンデンサーが邪魔をして暗くなるからです。
2.100V時の発行状態(95Vも同様のため省略)
完全にフラットになっている
3.結論
チラツキ発生の要素は、電源電源の変動(当然の前提)を除いて2つの要素でした。
■1つ目は「LEDチップの直列接続数」が多すぎた事
■2つ目は「平滑コンデンサーの容量」が少ないこと
■改造前
ACクランプ電流計 68mA
■改造後
ACクランプ電流計 82mA
■考察1
改造前は定電流部がほとんど効かず消費電力の全てをLEDが消化していたと仮定して。
(1)改造前
全消費電力 68mA * 100V = 6.8W
1LEDチップあたり 6.8W / 11個 = 0.618W/個
(2)改造後
全消費電力 82mA * 100V = 8.2W
1LEDチップあたりの消費電力は電流増加分に比例するとして 0.618 * (82/68) = 0.7452W/個
定電流ICの消費電力は全消費電力 - 全LED消費電力として 8.2 - (0.7452*10) = 0.748W
定電流ICの内部チップの温度は、アルミ基板の温度+IC内部熱抵抗*IC消費電力 = 77℃ + (100℃/W * 0.748W) = 151.8℃
※ICの内部熱抵抗はデータシートによると 100℃/W
IC(H8080)のチップの最大温度は 150℃の為、ほぼ限界温度となる。
しばらくのあいだ点灯テストをして様子を見ることにします。
いずれにしても、寿命は短くなっているのだと思います。
■考察2
明るさは増加したように感じられます。
(1)LEDでの消費電力は、
改造前が6.8W
改造後が(0.7452 * 10) = 7.452W
60W型相当だったので、 60 * (7.452/6.8) = 65.7W型相当
LEDチップを一つ減らしたにもかかわらず明るくなっていました。
原因を想像して、それを確認する為にいろいろ試してみましたが、
改造してそれを使うのは以ての外、温度も上昇するし寿命も短くなると思われますしね。
このダイソーの200円(以前は150円)LED電球は回路設計は納得し難いですが、
作りは良いと思います。
チラツキがあまり気にならない場面や場所、電源が安定している環境などで使うなら
コストパフォマンスはとても良いと思います。